古都の夕べについて

昨年12月からボーカルで参加している、古都の夕べの話をしようと思います。

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進行方向通行別区分というバンドがいました。

いつから知ったのかは覚えていないけれど、相対性理論の元になったバンドがあるらしい、という、当時急速に発達していったインターネット文化の中で知りました。

mixiとか懐かしいですね。闇真っ盛りの少女あゆ巫女は"ニンフェット(少女論)"とか"東欧圏の音響・電子音楽"とか"ピンク映画"とか"にせんねんもんだい"とか"The Pop Group"とか"嘘をつきたい。"とか"夢で見た異性を好きになる"とかのコミュニティに入っていましたね。懐かしいですね。

さて、当時相対性理論の大ファンだったわたしは、さらなる衝撃を受けました。

まず、歌詞が適当すぎる。適当すぎるのにセンスしかない。曲はキャッチー&キャッチーな全曲シングルカットの捨て曲なし。ボーカルがジャイアン、でも癖になる。どの点に於いても称賛しか見当たらず、ポップミュージックの更なる境地を見つけてしまった感。

しかも詳しく調べてみると「名前が適当♪名前が適当♪」の歌詞通り、メンバーの名前が適当、そして毎回解散ライブと再結成ライブを繰り返ししているとのこと。

きっと意味わかんねえ人がやってる意味わかんねえ音楽だなあと思い、白くて重いiPodで、繰り返し繰り返し、聴いていました。

これが進行方向通行別区分の思い出。

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そして進行のフロントマン、及び古都の夕べの全てでありそのものである田中さんと初めて知り合ったのは、多分2年前の、リキッドルームの神聖かまってちゃん VS どついたるねんのライブだったと思います。

当時、所属していた地下アイドルグループ解散直後だったわたしは、唯一対バン相手で親交があった黒猫の憂鬱のくり子ちゃんに「地下アイドルカラオケ大会に欠員が出たん!あゆ巫女ちゃんでーへん?」とのお誘いに二つ返事で承諾「にんじゃりばんばん」を歌いました。

名曲ですよね、にんじゃりばんばん。どうしてにんじゃりばんばん、愛してにんじゃりばんばん。

そこの楽屋にいたのが、真部さん、西浦さん、田中さんの進行お三方でした。

真部さんと西浦さんには以前お会いしたことがあったけれど、全くの初対面の田中さんへ抱いた感想は「ア、やっぱり変な人ダ!」と、音楽と人物像がジャストフットし、ストンと腑に落ちた印象がありました。

(真部さんと西浦さんとの写真を撮ってもらったのだけど「イイねイイね〜〜イイよ〜〜」とめちゃくちゃ変な角度で撮ってくれた)

進行は記憶だとこのライブをもって完全に解散状態となり、田中さんは進行の次なるプロジェクト"古都の夕べ"でまた唐突にライブを行い、その度に音源を出す、という活動にシフトチェンジし、わたしも数回、完全なるただのファンとして見に行き音源を購入し、変な曲、と思いながら、iPhoneで繰り返し繰り返し、聴いていました。

そして去年の12月、SuiseiNoboAzなどで活動している友達のスーパーギタリスト、高野くんから突然「田中と飲まないか」と連絡がきて、なんでわたしなんかと?我、所属ユニットも所属グループも崩壊した、何の音楽人かもわからないただのネクラな女ぞ?と思いつつ、二つ返事で了承、じゃあ11月21日に、と約束を。

それが二転三転あり、なぜか「その日レコーディングだから遊びにきなよ」と言われ、夕方すぎに恐る恐る、かの有名な三軒茶屋クロスロードスタジオに赴くやいなや「お、本当にきた、お久しぶりですね〜じゃあ早速コーラスやってみようか」と。

なぜかその場で8曲を覚え、歌い、22時頃なんとか全曲録音終了、曲間になんども「これで大丈夫ですか?ありますか?」と聞くも「イイねイイね〜何の問題もない」と、これまた初対面の時と同様、適当。

メンバーの高野くん、この日が初対面のドラムのさとこさん、ベースのどしまる、クロスロースタジオ井上さんまでも何を歌っても「すごくイイ〜!」と、え、緩?!こんなんでええんか?ええんだな?嬉?と、怒涛の数時間だったのを、よく覚えています。

帰り際、田中さんに「来月2回ライブあるんだけどね〜まあ気が向いたら参加してもいいですよ」と言われ、え、フランクか?古都の夕べでそんなフランクな参加ええんか?お?と思いつつ反射的に「参加します!」と返事、ただし「1回目は10日後くらいで覚えられるか自信ないので…クリスマスイブのライブなら…」とライブの参加が決まり、その日は解散。

そしてなぜか「せっかくだからどっちも歌おうよ、音源から売るしさ、大丈夫大丈夫」との高野くんの言葉により12月1日、なぜか無理山無理の助けスケジュールで当日までシークレットの突然、 9曲覚える。

初ライブまでの間、我、エンドレスリピートでせんとくんと踊り続ける。みんな、色々あるよね。

これが、古都の夕べに参加したいきさつ。それから約半年ちょっとでシングルという名のアルバムを4枚、曲にするとちょうど30曲が生まれました。

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田中さんは不思議な人で、使う言葉が自由自在で頭がいいなあと思えば言葉の自由自在さ故に会話が通じなくなるときもあり、変なことであればあるほど面白がったりもするくせに、人情は厚く、人のことを自然に思い遣ることもできて、不思議なバランスの不思議な魅力がある人です。

音源を出してすぐなはずなのに、またすぐレコーディングするかと言い出したり、スタジオでその場で5曲作ってしまったり。天才・鬼才という単語がこんなに似つかわしい人に初めてで、音楽も、人格も、生き方も、当時ただのファンだった時以上に、尊敬しています。そして、その田中さんが、今の編成の古都ですごく伸び伸びと楽しそうに音楽をしてるのを見てると、わたしもすごく楽しいし嬉しい。

このご時世で流通も配信もしない、情報も少ない、こんなやり方じゃあ売れるはずもない、でもそれでも何の見返りも計算もなく、楽しいから、お客さんも楽しみにしてくれるから、やる、それだけなのです。

田中さん以外のメンバーも大好きで、高野くんは、軽薄そうな印象とは裏腹に、知れば知るほどメンバー想いで情が深く、文章がうまくなんでもできて、色んなバンドを掛け持ちしているので多忙なのに、文句ひとつ言わず睡眠時間を削って色々な雑務をこなしてくて、言うまでもなくギターが最高。

ドラムのさと子さんは、本当に本当に心が綺麗で優しくて澄んでいて、美人なのに中身は飾らず庶民的で誰もをほっこりとさせ、よくローソンの制服みたいな服を着ている。

ベースのどし丸は「いや〜全部同じ曲に聴こえますね!聴くたび新鮮!全然覚えられません!」と一見舐めたような姿勢にも関わらず、なんだかんだライブまでにはちゃんと覚えてくるし、リハも一番乗りだったり、前日の別バンドでのダイブ(ダイブしがちぎん?)で骨にヒビは入っても包帯をグルグル巻きにして演奏する。シャンシャンみたいで、いるだけでみんなを和ます人型シャンシャン。

ただ、古都の夕べは基本田中さんのプロジェクトで、田中さんが飽きたら終わりだし、いつも次のライブは決まっていないし、フジロックは落ちたし、いつ終わるか分からない、水物です。

売れようとかのし上がろうとかそういう打算が一切なく、楽しいからやる、ただそれだけ。そして、まだこの編成は半年と2か月だけど、ずっと楽しいのです。

大人になって青春がまた戻ってきたかのような、部活動で切磋琢磨しながらも笑い合う仲間のような、大人だけど大人になれないちょっとダメな人間たちの、最高の煌きなのです。

少なくともわたしにとってはそうで、青春時代の一番煌めくはずの時期に暗い孤立した時代があったわたしは、グループや界隈や、何かの輪の中に入るのに抵抗があり、バンドに属さず、仲良しグループを作らず、どこともつかず離れず、掴み所のない女として生きてきたし、人に簡単に理解されたくはない、と思っていました。

そんなわたしが初めて仲間というものを知り、大切に思っているのが、古都の夕べです。

今まで、思いは言葉にすれば消えてしまう気がして、言葉にするのを恐れていたし、気持ちは宝物なので、基本誰とも共有をせず、全部自分の中に大事にしまっていました。だって宝物は、軽々しく見せ合ったりぜず、宝箱の中にしまって時々眺めるのが、一番美しいから。

以上の理由から、気持ちや考え、なぜ古都の夕べに参加したかなども含め、ちゃんとした文にしてたことがありませんでした。

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前置きが長くなりましたが、今回、このようにして文章にしようと思ったのは、先日の古都の夕べのレコ発2日目のアンコール前に、どし丸のダイブにより怪我人が出てしまったためです。

この日は本来、アンコールをする予定がなく、セトリも16曲と多めに作っていました。だけど、お客さんがすごく盛り上がって、やってるこちらもすごく楽しくて、やるか?!やろう!と、当初予定がなかったアンコールを、急遽することにしました。

そこに、更に盛り上げようとダイブをしたどし丸が、運悪く華奢な女の子に当たってしまい、女の子は倒れ、アンコールは中止になりました。

心配しているとだろう見てくれていたお客さんにまず伝えたいのは、倒れた女の子は無事で、次の日すぐ病院へ行ってもらい検査をし、多少のムチウチ症状はあったものの、それ以上の大事には至らなかった、ということです。女の子とは、現在進行形で連絡を取っており、脳にも関係してくるかもしれない怪我なので、しばらく続けて様子を伺ってみるつもりです。

治療費とお詫びは、当然のことながら、どしくんから女の子に振込という形で支払いました。後日、直接謝罪もしにいくつもりです。トラウマになりかねないこの出来事にも関わらず、女の子からは、逆に温かい言葉をもらい、二度とこの様な事故が起きないよう心に誓いたいと思いました。

ちゃんとするまで軽々しく発言できなかったので、現場にいた方皆さんを不安にさせてしまったと思います、ごめんなさい。

公式からのこの件についての言及はないこととなりましたので、個人的に文にさせていただきましたこと、ご了承ください。

今回のことは、あってはならないことですし、メンバーの行動の過失はバンドの責任でもありますし、こういうことは初めてで、なんと言っていいか分からないですが、怪我をした女の子、女の子のお友達、お客さん、箱の方、関わってくれた全ての方、今回は、本当に申し訳ありませんでした。それに尽きます。

田中さんがMCで繰り返し言っていた「現体制はこれで最後」が本当になってしまうんじゃないかって、すごく怖い。守りたい。けれど、こればかりはわたしの意思だけではどうしようもないので、これから古都の夕べがどうなるかはわかりませんが、どうか何卒、未熟者ではありますが見守っていていただけたら幸いです。

あゆ巫女

あゆ巫女のホームページ

内気な宅録女子です。暗くてポップでメロウな曲作って歌います。イリオモテヤマネコと思っていいです。ご依頼はこちら→info@purre-goohn.com かこちらまで→cpcp143@gmail.com

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